クラウドサービス依存のリスクと対策

最新のクラウドサービスを導入したり、基幹業務システムを社内設置のサーバー（オンプレミス）から乗り換えて社内システムをクラウド上に構築したりといったIT活用を進めたとき、ある意味クラウドサービスへの業務の依存性を強めてしまうことになります。
それらクラウドサービスが「停止してしまったらどうする？」という、もしものリスクについて検討し常に備えておく必要があります。

身近なクラウドサービスの停止事例

クラウドサービスの多くは、データセンターの多重のバックアップ体制や負荷の分散技術により耐障害性が優れているとして売り込まれています。
しかし完璧なサービスというものは存在しないもので、誰しもが聞いたことがある、利用したことがある大手サービスといえども何らかのトラブルによりサービスの停止、障害が発生しています。

過去のサービス停止、障害事例

サービス名

Amazon Web Service (AWS)

発生時刻(24時間表記)、問題継続期間

2019年8月23日(金) 12:36 ～ 18:30 (約6時間)

原因

空調制御プログラムのバグによりサーバーが冷却されず、温度上昇のため停止

主な影響

AWS上に構築されていたPayPay決済、ユニクロ オンラインショップ、クラウド会計ソフト freeeなどが停止。

参考: https://aws.amazon.com/jp/message/56489/ https://paypay.ne.jp/notice/20190823/01/ https://twitter.com/UNIQLO_JP/status/1164830761024806913 https://www.freee.co.jp/blog/news_20190828.html

サービス名

Dropbox

発生時刻(24時間表記)、問題継続期間

2014年1月11日(土) 10:40 ～ 1月13日(月) 08:40 (約3日)

原因

内部システム更新時の不備

主な影響

Dropboxに保存していたファイルにアクセスできない。また、アクセス復旧後も共有機能が利用できない。

参考: https://dropbox.tech/infrastructure/outage-post-mortem

サービス名

Google Cloud / Workspace

発生時刻(24時間表記)、問題継続期間

2020年9月25日(金) 10:00 ～ 10:33 (約33分)

原因

内部システムの障害

主な影響

Googleの各種サービス(Gmail, カレンダー, ドキュメント, ドライブなど)に繋がりにくい、または利用できない。

参考: https://status.cloud.google.com/incident/zall/20010

サービス名

Microsoft Azure

発生時刻(24時間表記)、問題継続期間

2021年3月16日(火) 04:36 ～ 18:37 (約14時間)

原因

認証プログラムのバグ

主な影響

Azureの認証を用いたMicrosoftの各種サービス(Dynamics, Office, Teamsなど)が利用できない。またAzureと連携した大塚商会 バックアップサービスなどが利用できない。

参考: https://jpazureid.github.io/blog/azure-active-directory/20210318-rca-azure-ad/ https://mypage.otsuka-shokai.co.jp/news/detail?linkBeforeScreenId=OMP20F0102S01P&oshiraseNo=MDAwMDAwMjExOQ==&navi=1

サービス名

Salesforce

発生時刻(24時間表記)、問題継続期間

2021年5月12日(水) 06:08 ～ 11:20 (約5時間)

原因

内部機能更新時の不備

主な影響

Salesforceにアクセスできず業務データが参照できない。また、Salesforce上に構築されていた新型コロナワクチン接種円滑化システム V-SYSなどが停止。

参考: https://help.salesforce.com/articleView?articleView%3FsiteLang=ja&id=000358392&type=1&mode=1 https://www.mhlw.go.jp/content/000778619.pdf

クラウドサービスが停止してしまったら

前項の事例のように、クラウドサービスの停止は主に下記のようなトラブルが原因で発生します。

• サイバー攻撃を受けた、ウィルスやランサムウェアに感染した
• 地域の停電または各種天災により電源が失われた
• データ記録媒体のトラブルにより、データが消失した
• 管理会社の作業ミスやサーバープログラムのバグにより正常に機能しなくなった

あるいはサービス自体に問題はなくともインターネット回線、プロバイダ、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)といった通信網でのトラブルによりクラウドサービスに接続できなくなるケースもあります。

もし基幹業務を委ねているクラウドサービスにこのような問題が発生した場合、どうなるでしょうか。
「顧客データが手元にない」「日々の業務が行えない」などと、業務が停止してしまうことにもなりかねません。

クラウドサービスの停止に備えて、業務の停止を防ぐには

IT活用におけるあらゆるシーンで「バックアップを取ること」という施策は単純ながらとても重要で、それはクラウドサービスの停止への備えとしても有効です。
クラウドサービス上の業務システムが万が一停止してしまっても直近のバックアップから業務を再開することができるよう、復旧の手順を策定しておきましょう。

バックアップの方法はクラウドサービスごとに異なり、技術的なハードルが存在する可能性があります。
またバックアップはどこに保管すれば安全なのか、すぐに取り出すことができるのかも確認しておく必要があります。

バックアップについての技術的なご質問、復旧手順など運用方法、実務担当者へのIT教育、クラウドサービス自体のことも含め、当社ユーシステムではまとめてご相談を承っております。